2017.10 «  - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 - - » 2017.12
TOP > 停泊の形態とその長短
 ← ゆきなみ型護衛艦と戦域ミサイル防衛 その7 | TOP | 1/700 ゆきなみ型護衛艦「みらい」(インド洋作戦時) その15

停泊の形態とその長短 

停泊中の日本海軍艦艇と言うと、ブイに係留している姿を思い浮かべるのではないだろうか。
一方で、最近の自衛艦はほとんどが岸壁係留であり、訓練以外でブイ係留を行っているのは今は呉ぐらいだろう。
大湊の係留ブイなんか、他所の総監部行くと存在すら知らない人がいる。

停泊とは何かと言えば、海上衝突予防法においては岸壁係留、ブイ係留、錨泊及び乗揚げを指し、直接または間接に船体が陸地と接している状態を言う。
ただし、乗揚げは座礁やビーチングなど特殊な場合なので、今回は触れない。
さて、それぞれの停泊状態について長短を述べる前に、停泊中の艦の状況について少し掘り下げてみよう。

停泊中には、人や物が出入りする。
人の出入りは、乗員の上陸、司令部の移乗及び他の指揮官や連絡官の訪問などが主である。
機器の故障があれば、技官や業者もやってくる。
物については、燃料や潤滑油、真水及び糧食などの搭載物件、修理部品や事務用品などの補給物品が搭載される一方で、弾薬火工品や標的の陸揚げ返納と搭載が行われる。
また、艦上で生活している以上は各種のゴミが必ず出るので、この陸揚げも忘れてはならない。(200人が3週間分のゴミを貯めるわけで、その量は尋常ではない)
そして、艦は動かないので主機(エンジン)は当然停止しているものの、当直員が生活し、即応体勢を維持するためには電気と蒸気は止めるわけにはいかない。
また、停泊中においても電話やFAX、メールなどの隊内通信や必要な文書の送受を行う必要がある。
このように、停泊中であっても艦は生きているのである。
停泊状態の長短とは、つまり、これらの活動に対しての利便性であるとも言える。

 岸壁係留
桟橋(または舷梯)を介して、直接人員の出入りができる。
糧食や補給品の搭載は、岸壁へは車輌輸送、それ以降は人力またはデッキクレーンによる。
陸揚げも同様に、桟橋を経由して岸壁へ陸揚げし、車輌にて輸送する。
全般的に揚搭が簡便である。
燃料は油船による。(油桟橋では、陸上タンクからの直接受給が可能)
岸壁から給水及び給電が可能であり、設備次第では雑用蒸気も受給できる。艦内の補機(発電機及び補助ボイラー)を停止できるため、点検整備が容易である。
有線通信、光ファイバー通信が使用できるため、無線に比べ通信速度・確度が得られ、電波を発しないことから防諜上も有利である。
複数の係留索により繋止され、出港には曳船の支援も要することから、緊急出港には不向きである。
多数の艦艇を係留するためには広大な敷地を要する上、大型艦の繋留には岸壁に相応の係船能力が要求されるなど、インフラ整備に多大なコストがかかる。

 ブイ係留(浮標係留)
岸壁よりも係留設備が簡便である。
出入港時には、内火艇によるブイと錨鎖の嵌脱作業があるため、迅速な出入港には練度を要する。
海底ケーブルにより給電及び有線通信が使用できるが、蒸気の供給はできない。
人員の移送は搭載艇によるため、上陸・帰艦が時間的に制限され、搭載艇運航のため当直員に負担を強いるなど乗員の休養には配慮を要する。
搭載物件の揚搭は、全て支援船(油船、水船、ゴミ船及び運荷船など)によって行い、弾薬火工品及び糧食はデッキクレーンが主用される。
潮流や風浪の影響を大きく受けるため、係留ブイの設置場所には配慮を要する。

 錨泊
自艦の錨をもって停泊するため、繋留設備を必要としない。
錨鎖はシャックル部で嵌脱でき、緊急時には捨錨により迅速に出港できる。
電力及び蒸気を受給できないため、補機は運転を維持しなければならない。
電話やFAXは船舶電話を使用するため高額であり、回線も混雑する。
その他はブイ係留に準ずる。

このように見ていくと、岸壁係留が最も利便性が高く、停泊状態として望ましい。
日本海軍においては、インフラ整備が進んでいなかったことに加え、戦艦や空母などの巨大艦を始め膨大な量の艦艇を擁していたことから、岸壁係留を主用することは難しかったものと思われる。
一方で、入り組んだ海岸線により適当な錨地を多数確保できたことも、ブイ係留を一般化させる一因であっただろう。
戦後もしばらくはブイ係留が主流であったが、土木技術の向上と経済発展に伴い岸壁が順次整備・拡大され、現在に至っている。
保有する艦艇数が戦前に比べ格段に少ないこともあり、ほとんどの艦艇が岸壁係留である。
ただし、呉は岸壁に対して艦艇数が多いため、時おり錨泊ないしブイ係留している他、大湊は水深の制限から大型艦は港外投錨となる。
関連記事
スポンサーサイト
[2015.02.03(Tue) 23:59] 艦艇の話Trackback(0) | Comments(2)
↑TOPへ


COMMENT

ありがとうございます by メバル所長
いろいろ、参考になります。
甲型さんのブログとコメントで、自衛艦艇の錨泊を見るのがより楽しみになりました。

いえいえ(^^ゞ by 大和甲型
どうしても軍艦を扱ったサイトでは、兵器の性能や個艦の要目に目が行ってしまいがちです。
こういう「フネ」としての側面も紹介していければと思います。

コメントを閉じる▲

 ← ゆきなみ型護衛艦と戦域ミサイル防衛 その7 | TOP | 1/700 ゆきなみ型護衛艦「みらい」(インド洋作戦時) その15

COMMENT

いろいろ、参考になります。
甲型さんのブログとコメントで、自衛艦艇の錨泊を見るのがより楽しみになりました。
[ 2015.02.06(Fri) 17:21] URL | メバル所長 #- | EDIT |

どうしても軍艦を扱ったサイトでは、兵器の性能や個艦の要目に目が行ってしまいがちです。
こういう「フネ」としての側面も紹介していければと思います。
[ 2015.02.07(Sat) 17:28] URL | 大和甲型 #NKwY6NnY | EDIT |

COMMENT POST















管理者にだけ表示

 ← ゆきなみ型護衛艦と戦域ミサイル防衛 その7 | TOP | 1/700 ゆきなみ型護衛艦「みらい」(インド洋作戦時) その15